バニラ・シティ(A-1)

時間よとまれ(A-3)

大都会(A-5)

Album Data

Photo&Text

第1期
1977〜79

長沢博行(vo,b)
牧野哲人(g,cho)
中島幸雄(key,cho)
高橋まこと(ds)

アルバム『HERO’S GIFT』リリース(79.3.21)

第2期
1979

長沢博行(vo,b)
牧野哲人(g,cho)
中島幸雄(key,cho)
伊藤まさみ(ds)

男爵の異常な愛情(1979年6月12日日本青年館LIVE)

第3期
1979〜81

長沢博行(vo,b)
牧野哲人(g,cho)
ホッピー神山(key,cho)
伊藤まさみ(ds)

※写真左は佐藤ミツル(support)
シングル「チャイナ・ガール」リリース(80.6.10)

ロンリー・ナイツ(1980年制作のデモ・テープ音源)


●STORY●

1977年2月の安全バンド解散後、同年9月ごろに長沢ヒロが新たに結成したグループがHERO。約1年間は曲作り・音作りに専念し、78年夏にライブ活動を開始。79年3月にポリドールからアルバム『ヒーローズ・ギフト』をリリース、同年6月には日本青年館でワンマン・コンサートを開き、81年前半まで精力的に活動した。

Flyer

結成時は、キーボードに中島幸雄(のちに幸雄改め優貴)、ドラムには高橋まことという布陣だったが、編成はその後上記のような変遷をみせている。サウンドの方も、プログレ・ハード路線から、特にホッピー神山の参加を機に、よりポップでニュー・ウェイヴ色の強い方向へと変化していった。

同時期に活動していた英国のパワーポップ・グループ、モーターズの某曲にインスパイアされたと思しき前掲の「ロンリーナイツ」は、そうした後期の代表曲で、安全バンドとは大きく異なるコンセプト、タイム感、センスでの音作りをめざす長沢ヒロの意欲的な姿が鮮明に伝わってくる。

なお四人囃子の佐藤ミツルは、牧野哲人および中島幸雄と札幌で「マーシャン・ロード」というグループで共に活動していた縁もあり、当初からHEROのステージにはゲストとして登場しており、80年以降は準レギュラー・メンバー的なスタンスでHEROのライヴ・パフォーマンスに深く関わっている。

ところでアルバム『ヒーローズ・ギフト』のレコーディングは第1期のメンバーによって行なわれたが、直後に高橋まことがメンバー間の軋轢から脱退したため、リリースされたジャケットの写真には、高橋まことではなく後継の伊藤まさみが写っているという変則的な事態となった(伊藤まさみは1曲も録音に参加していない)。

※高橋まこと脱退の経緯については、御本人の著書「スネア」(07年4月刊)に詳しく書かれています。


HEROのライヴでの人気はなかなかのものがあり、また渋谷陽一氏が彼らを絶賛したり、そのニュー・ウェイヴ風味も含めた多様な音作りをこなす高度な演奏力を買われ、『東京ワッショイ』をリリースし気を吐く遠藤賢司や、ロッキング・オン人脈で、シンガーとしての松村雄策氏のバッキングを務めることもあった(川口市民会館で開かれたテレビ埼玉のイヴェントに出演した時、管理人は、HEROの演奏を観た共演者の加藤登紀子さんから「バックの仕事って頼めるかな」と尋ねられたこともある)。

しかしHEROは、新たな曲のレコーディングに着手しつつも、セカンド・アルバムを完成させることなく結局81年に解散してしまう。

解散の原因は、近藤真彦のバッキングなど芸能界での営業の仕事が増えたことに、メンバー間で対応が割れたためのようだ。ちなみに85年の紅白歌合戦でも歌われた近藤真彦のヒット曲、「ヨイショッ!」の作曲は長沢ヒロによるもので、HERO時代のそうした活動を縁としている。

解散後長沢ヒロは、後期HEROでの志向に一脈通じるところのある変態ポップ・グループ「ペグモ」を、岡井大二・坂下秀実(四人囃子)、恒田義見(ハルヲフォン)らと結成する。

キーボードのホッピー神山はファンキー末吉らとファンク・バンド「爆風銃」(バップガン)を結成。爆風銃解散後ホッピーは「近田春夫&ビブラトーンズ」に参加している(爆風銃の他のメンバーは爆風スランプを結成)。

安全バンドと同様に、収録されていない楽曲が多々あることも含め、スタジオ・レコーディングされたアルバムにHEROの魅力が十全に収められているとは言えない。より魅力的なライヴ音源がかなり残されているので、今後まとまった形で世に出せればと思っている。

SOUND 1980s 長沢ヒロ&HEROのページにも「10,000秒の恋」のライヴ音源(1980年11月@埼玉会館)をUPしてあります。

シングル盤「チャイナ・ガール」について

現在、HEROの音源で正規に入手できるのは、ジャッキー・チェンのカンフー映画「拳精」主題歌の、日本版向けヴァージョンを担当した時のシングル盤音源「チャイナ・ガール」のみである(C/W「エブリバディ・ファイティン」コロムビアAK671AX)。ただしこれは営業的に制作されたレコードなので、同曲がライヴで演奏されたことはないし、HEROサウンドとしては異例なテクノ・ダンス・チューンとなっている。ジャッキー・チェン映画の主題歌としての人気は非常に高く、オリジナル版を元にした現行の「拳精」のDVDにHEROヴァージョンが収録されていないことが、日本のファンの大きな不興を買っているようだ。

「チャイナ・ガール」は、同様に四人囃子が担当した「酔拳」のテーマ・ソング「拳法混乱(カンフージョン)」とともに下記CDに収録。

CD:ジャッキー ・チェン パーフェクトコレクション

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