安全バンドLIVE! 1974-76

2006.6.24リリース
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● 詳細解説 ●

<詳細解説>text:高沢正樹

[1976年9月15日phoenix vol.5 田島ヶ原野外フリーコンサート]

70年代、毎年9月に、URCが浦和市(現さいたま市)郊外で千人規模で開いていた野外フリー・コンサートからの音源。4トラック・オープン・テープデッキによる19cm/sec・PAライン+エアー(客席)録音のステレオ・ミックス。

personnel:長沢博行(vo,b)・相沢友邦(g)・中村哲(keyb)・伊藤純一郎(ds,cho)
/support:坂下秀実(keyb)・藤田義治(g)

01 けだるい *version1 (3’50)

セカンド・アルバム『あんぜんバンドのふしぎなたび』を9月1日にリリースしたばかりのライヴでの演奏。リード・ギターは相沢友邦。間奏の後半(サビ部分)でリード・ギターがオフになるのは、この部分からリードをサポート・メンバーの藤田義治にバトンタッチしたのを、PAミキサー側で追いきれなかったためだろう。ヘヴィなサウンドを縫うようにして疾駆するオルガンは、サポート・メンバーの坂下秀実(四人囃子)。長沢博行のヴォーカルは、ファースト・アルバム『アルバムA』での同曲よりタフでワイルドであり、彼のヴォーカリストとしての魅力をよく伝えている。コーラスは伊藤純一郎。

[1975年7月18日 銀座 スリー・ポイント「銀座の奇蹟」]

ここから4曲は、URCが73年春からほぼ3年間、銀座「スリー・ポイント」で毎週金曜日にプロデュースしたライヴ企画「銀座の奇蹟」における音源。4トラック・オープン・テープデッキによる19cm/sec・エアー録音のステレオ・ミックス。

personnel:長沢博行(vo,b)・相沢民男(g)・相沢友邦(g)・中村哲(keyb,sax)・伊藤純一郎(ds,cho)

02 昔のように (6’25)

ギターの相沢民男の作詞作曲・ヴォーカルによるナンバーで、レコードには収録されなかったものの、彼が在籍中のライヴでは、初期のころから毎回必ずと言っていいほど演奏されていた。当初はもっと遅いテンポで始まったが、間奏部分に入ると次第に速度が早められ、相沢民男のギター・ソロがどんどん白熱して行くアレンジは一貫している。ここではアメリカン・ロック的なスタイルに変貌しているが、イントロやエンディングでテーマ的にくり返されるギターのトレモロ奏法を聴けば、元々は相沢民男がジミ・ヘンドリックス(の『Bold As Love』)にインスパイアされて曲を作ったことがわかるだろう。もちろん彼も、ジミ・ヘンを深く敬愛するギタリストの一人だった。パワー、スピードとともに非常な繊細さを合わせ持つ、伊藤の独特のドラミングが炸裂。

03 教えてまわれ (5’28)

ドラムの伊藤純一郎の作詞作曲・ヴォーカルによるマイナーのヘヴィ・ブルースで、『昔のように』と同じく、ライヴでの定番ではあったがレコードには収録されなかったナンバー。伊藤が非常に優れたヴォーカリストでもあったことがわかる。リード・ギターは、イントロ部分が相沢民男、後半の間奏が相沢友邦。オルガンとサックスでマルチに活躍しているのはもちろん中村哲。この曲での重くダークな感じは、トリオ編成だった初期安全バンドの雰囲気が色濃く残っているものと言える。

04 13階の女 (5’08)

安全バンド最大のヒット曲?の登場。イントロに入るオルガン以外は、ほぼ『アルバムA』でのアレンジに準じた演奏となっている。エンディングでジャグ・バンド風になる部分は、そのアルバムのレコーディング中に固まって行ったアレンジだが、レコーディングから数ヶ月後となるこの日の演奏の方が、断然生気があって楽しい。リード・ギターは相沢民男。聴かせどころである3声のコーラスは、主メロの長沢をはさんで上が伊藤、下が相沢民男。

05 いくらまっても (8’46)

この曲も、演奏し始めた当初73年ごろはスローなブルース・ロック風だったのだが、翌74年にはスピードアップされてハード・ロック化、間奏部分だけがファンク・アレンジという形になっていった。昨年(05年)リリースされた復刻CD『ワンステップ・フェスティバル』に収められた音源で、その発展途上の姿は確認できるが、75年2月からの『アルバムA』のレコーディングを機に、最終的に全体がファンク調に統一されることになる。ここでの演奏は、一聴してわかるようにその『アルバムA』に収められたテイクよりはるかに力強く、バンドとしてのタイトな一体感、グルーヴ感があふれるものになっている。16に徹したリズム・ギターが相沢友邦、リード・ギターが相沢民男。コーラスは、ここでは上が相沢民男、下が伊藤。

[1974年11月18日 東洋大学白山祭「ドアをしめろ」コンサート]

URCがプロデュースした東洋大の学園祭からの音源。録音は、安全バンド専属でもあったタージ・マハル旅行団のエンジニア、林勤嗣氏によってなされたもので、PAライン+エアーのソースからの2トラック・カセット・デッキによるステレオ・ミックス。録音用のミキサーを通した上でのミックスなので、左右の定位は完璧である。

personnel:長沢博行(vo,b)・相沢民男(g)・伊藤純一郎(ds,cho)
/support:中村哲(keyb)

06 夜(The Night)(14’02)

初期安全バンドの方法論の集大成ともいうべき大作。リアルタイムで74年までに安全バンドのライヴを体験していれば、ステージのラストを飾る曲として君臨していたこの『夜』を聴くことができたはずである。しかしこの曲は、今回収録されたライヴを最後に以後一度も演奏されていないので、したがって75年以降(=ファースト・アルバム・リリース以降)の聴き手・ファンには、まったく未知の世界の安全バンドということになるだろう。歌の部分の基本のリフはマウンテンの『Crossroader』を援用しているが、全体としてはプログレ風でありブラックサバス的な雰囲気もあるこの曲で最大限に発揮された、こうしたヘヴィなサウンド、スケールの大きなパフォーマンスこそ、アルバム・リリース前の彼らの真骨頂を伝えるものだ。

07 暗闇の中から (6’12)

『葬送行進曲』を交えた前曲のエンディングからオルガンだけが残り、メドレーとして続くこの曲が演奏されたのは、たぶんこの日だけのことだったと思われる。ストーリー的には「夜」が明けて「朝」がやってくるという組曲になっているわけだが、ピンク・フロイド的な面もあるサウンドにのせて歌われる「さぁ出ておいで/暗闇の中から」という歌詞から、盟友四人囃子の『泳ぐなネッシー』へのアンサー・ソングみたいだと、当時URC関係者の間では語られていた。エコー・チェンバーによるSEもドラッギーな、シンプルではあるが幽玄な佳曲。

[1974年12月27日 銀座 スリー・ポイント「銀座の奇蹟」]

「銀座の奇蹟」年末恒例の無礼講的なパーティ・ライヴからの音源。この年は、安全バンド・四人囃子、両グループのマネージャーがヴォーカルをとる『Wild Thing』や『Boom Boom』といった曲に森園勝敏も参加してのセッション大会で、狂乱のうちに終わったのだった。当日のそうしたくだけた雰囲気もよく伝わってくる、2トラック・カセット・デッキによるエアー・ステレオ録音。

personnel:長沢博行(vo,b)・相沢民男(g)・伊藤純一郎(ds,cho)
/support:相沢友邦(g)・中村哲(keyb)

08 怒りをこめて (7’36)

『アルバムA』でのロックンロール・スタイルとはまったく違う、ファンク・ヴァージョン。実はこの曲は、元々72年12月の初演時からしばらくは、ファンク・アレンジで演奏されていた。ストレートなロックンロール調もいいが、ファンクの重いノリが歌詞に滋味・奥行きを与えているこのヴァージョンは秀逸。後半の間奏で、自らのギター・ソロにユニゾンでスキャットする相沢民男を追いかけて、長沢博行がやはりスキャットで絡むところなど、ライヴならではの聴きもの。ここでも16のコード・カッティング主体のギターが相沢友邦だが、前半の間奏では渋いリード・ギターも弾いている。また全編を通し、隠し味的に中村のエレピが活躍。

[1976年7月26日 浦和市民会館「安全バンドワンマン・コンサート」]

75年11月の相沢民男脱退後、76年の春はセカンド・アルバム『あんぜんバンドのふしぎなたび』のレコーディングに専念していた彼らが、ほぼ8ヶ月ぶりに行なった本格的なライヴ・ステージからの音源。2トラック・カセット・デッキによるエアー・ステレオ録音。

personnel:長沢博行(vo,b)・相沢友邦(g)・中村哲(keyb)・伊藤純一郎(ds,cho)
/support:坂下秀実(keyb)・藤田義治(g)/guest:土門則夫(g)

09 もぐら (4’05)

純ロックンロール・ナンバー『Discover Japan』(アルバム未収録)と並んで、ライヴではよく演奏されていた安全バンドの3コード系のオリジナル。様々なアレンジで演奏されたが、ここではオーソドックスなシカゴ・ブルース調になっている。相沢民男在籍時は、「空は遠い昔の話〜」で始まるサビの部分に必ず付けられた彼のコーラスがないのが寂しいが、それを補って余りあるゲスト・プレイヤー土門則夫のリード・ギターが素晴らしく、また長沢博行のヴォーカルもクールで美しい。

[1976年12月 BLACKMORE’S RAINBOW TOUR]

来日したリッチー・ブラックモアズ・レインボウのツアーで、オープニング・アクトを務めたステージからの音源。『貘』の後半から『時間の渦』の初めまで、右側にあるべき坂下のオルガンの定位が乱れるものの、ほぼ完璧なステレオ・ミックスとなっている。今回収録された大阪、京都のもの以外に、広島公演の音源も残っているが、それらはすべて、安全バンドを気に入ったレインボウのミキサーARNIE氏が、2トラック・カセット・デッキにライン入力で録音してくれたもの。

personnel:長沢博行(vo,b)・相沢友邦(g)・中村哲(keyb)・伊藤純一郎(ds,cho)
/support:坂下秀実(keyb)

●12月9日[大阪厚生年金会館大ホール]

10 貘 (4’08)

セカンド・アルバム『あんぜんバンドのふしぎなたび』に収められたナンバーだが、スタジオ・ヴァージョンに比べ、リズム・アレンジがシンプルに整理されつつ大幅にテンポ・アップ、間奏部分もブルージーに始まって、ライヴ向けのより攻撃的なハード・ロックンロールになっている。それにしても、この曲に限ったことではないが、正確でありつつよくドライヴする彼のベース・プレイは圧倒的で、かつ高度なフレーズを弾きこなしながら、ここまで安定し歌心のあるヴォーカルを聴かせるベーシストを、少なくとも国内では私は他に知らない。

11 時間の渦 (5’10)

同じくセカンド・アルバムからの曲だが、6曲目の『夜』で集大成された彼らのヘヴィネスは、76年という時期にふさわしくソフィスケイトされて、この曲においてみごとに蘇ったと言えるだろう。いわゆる「フュージョン」的な手法が取り入れられていても、流行に乗っただけの凡百のグループとは一線を画す、重く歪んだサウンド、ビート。長沢博行に、プログレ的でもある実にユニークなこの曲想はどこから得たのか、尋ねたことがあるのだが、答は「リトル・フィートから」であった。わかる人にはわかる?・・・ミステリアスな中村哲(左ch)と、アグレッシヴな坂下秀実(右ch)の両キーボードの対照の妙も聴きもの。

●12月10日[京都会館第一ホール]

12 けだるい *version2(3’45)

このアルバム冒頭の同曲とは、大幅にアレンジが変えられたヴァージョン。ギターのひっかかるようなコード・カッティングがなくなって重さをそぎ落とした分、ツイン・キーボードが強調されたサウンドともあいまって、よりモダンな印象を与える鋭角的なハード・ロックになっている。エンディングの哄笑は、『アルバムA』のスタジオ・ヴァージョンと同じく伊藤純一郎。なおこのアレンジによる大阪公演でのテイクは、「ロック画報」第24号のサンプラーCDに提供したので、そちらで聴くことができる。

[付録:広島公演のカセットのインデックス・カードby ARNIE]

収録時間74分43秒



★ブックレット概要★

●安全バンド・バイオグラフィ〜3ページ/高沢正樹
●安全バンドの変遷(ファミリー・トゥリー完全版)〜2ページ/中村俊夫
●長沢博行・伊藤純一郎・滝口修一インタヴュー〜7ページ/高沢正樹
●銀座3ポイント・浦和市民会館などでの初出写真を含む写真5点
●収録音源メモ〜2ページ/高沢正樹
・・・他、全20ページ

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