PANTA&HAL LIVE! 1980.11.2
(税込)2800円 CARA3018 (CARAWAY)
<詳細解説>text:高沢正樹

[1980年11月2日 埼玉会館大ホール フラッシュバック!70-80
URC創立10周年記念フェスティバル]

1970年10月のウラワ・ロックンロール・センター創立から10年を経て、1980年に開催された記念イヴェント。PANTA&HAL以外の出演者は、内田裕也&1815Super Rock'n Roll Band With Smiler、長沢ヒロ&HERO(ゲスト:岡井大二)、P-MODEL、子供ばんど、水玉消防団、マゼンダ、鉄城門、レディキラー。

personnel:PANTA(vo,b)/平井光一(g,cho)/長尾行泰(g,cho)/石田徹(keyb)/中谷宏道(b,cho)/浜田文夫(ds,cho)

このCDの「詳細解説」では、主に80年10月にリアルタイムでリリースされたライブ・アルバム『TKO NIGHT LIGHT』(以下TNL)との比較という形で書こうと思う。TNLは、日本青年館での80年7月16日のライヴの模様を収めたもので、この音源のライヴの約4ヶ月前の記録ということになる(収録曲目は数曲において相違があるが、メンバーは同じ)。

※上の写真はこの音源のライヴ当日のもの。なおこのページの最後に、CD添付ブックレットに掲載しきれなかった、当日のステージ写真のアウトテイクをアップしておいた。

01 TKO NIGHT LIGHT (7'38)

02 キック・ザ・シティ (3'01)

1曲目の『TKO NIGHT LIGHT』は、イントロで同曲のTNLヴァージョンにはなかったギターやキーボードの遊びが加えられ、サイズ的にも長くなってヴォリューム感が増し、この日の濃密なステージのオープニングに相応しい堂々の快演となっている。テンポはTNLよりややスローなっているのだが、しかしスピード感には何の遜色もない。同様のことは続く『キック・ザ・シティ』にも言える。TNLのステージから10回ほどのライヴを経ているためだろう、この日は全体として演奏に余裕があり、バンドとしての一体感もはるかに強力であることが、この2曲で早速伝わってくる。

03 IDカード (4'20)

TNLには収録されていない、したがってライブ・ヴァージョンとしては初出となる音源。『1980X』でのスタジオ・ヴァージョンの、イントロとエンディングで聴かれたヘヴィなギター・リフは省略され、一方間奏部分を中心にリズムがアップ・テンポ(倍テン)となるアレンジを交え、こちらは明らかにスピード感が増したよりアグレッシヴな演奏になっている。

個人的にこの曲は、スタジオ・ヴァージョンでのヘヴィ・ロック=オールド・ウェイヴ的に思えたアプローチに、リアルタイムではかなり違和感を覚え、発表当時、PANTA本人に不満をぶつけたことがある。その時の私の傲岸不遜なインタヴューの模様は、一昨年リリースされた『PANTA&HAL BOX』の特典プレゼントで復刻されてしまったが(汗顔の至り。トホホ・・・)、PANTAがこの曲にイメージしたという「鉈(ナタ)を振り下ろすようなロック」という狙いは、このライヴでこそ十全に実現していると思う。

04 モータードライヴ (3'36)

05 フローライン (6'36)

06 トリックスター (4'56)

5曲目の『フローライン』は、スタジオ・ヴァージョンは存在せず、これまでTNLにのみ収録されていた曲。『モータードライヴ』のエンディングに引き続いて、しばし奏でられるキーボードによるイントロも効果をあげ、この曲の深みを改めて知らしめる演奏が展開されている。何よりもPANTAのヴォーカルから余計な力が抜けて、哀しみと苛立ちを湛えた歌詞、メロディが、損なわれることなく歌い上げられているのが素晴らしい。

トリックスター』も、ライヴ音源としては世に出るのは今回が初。基本的に『1980X』のスタジオ・ヴァージョンに忠実なアレンジだが、ライヴならではのノリに加え、平歌部分でPANTAのヴォーカルにコーラスが加えられたことによって、より艶のあるヴァージョンとなった。

07 マーラーズ・パーラー’80 (13'02)

PANTAのソロ・アルバム第一弾、『PANTAX' WORLD』でのオリジナル・ヴァージョンを大きく改変したTNLでのアレンジが、ここではさらに大幅に変更されている。中間部でブレイクが入ってバラード調になったり、ドラム・ソロまで加えられ、TNLでは7分余だった長さが、倍近い13分にもなった空前の大作ヴァージョン。リズム・セクションが休止してのバラード調の部分は、そのアレンジにふさわしい歌詞として選ばれたためだろう、それぞれ「夜に毒された路地裏に〜」「階段の下でふるえてた〜」で始まるコーラスが、オリジナル・ヴァージョンとは位置が変えられて前倒しで登場している。

08 マラッカ (4'12)

09 つれなのふりや (6'58)

この「URC秘蔵音源復刻シリーズ」全体に言えることだが、全ての録音は、URCが自らのイヴェントの記録として独自に行なっていたもので、もちろん後日ライヴ盤としてリリースすることなど夢にも考えておらず、録音にあたってバンド側と事前の打ち合わせがあったわけでもない。したがって、この日のPANTA&HALのようにほとんど隙間のないステージ進行となると、どうしても録音テープの時間切れによって演奏がコンプリートで収録できない事態は起きた。マラッカ』冒頭がフェイド・インでの収録になっているのは、それゆえであることを御理解いただきたい。

その『マラッカ』は、間奏のギターの後にメンバー紹介をはさみ、エンディングでは間を空けずに『つれなのふりや』のイントロのキーボードにつながって行く。これらはTNLではなかった趣向で、さらに『つれなのふりや』では、エンディングへ向かう「Rollin' Rollin'〜」「Guru Guru〜」の繰り返し部分がTNLヴァージョンより16小節も長くなって高揚感も倍増、荒ぶる航海のイメージがいっそうハードに表現されて、聴きごたえがある。

10 臨時ニュース(3'23)

11 ルイーズ (4'04)

*アンコール

12 BABY GOOD NIGHT (4'28)

13 メルティング・ポット (6'58)

臨時ニュース』『ルイーズ』が続いて演奏されて本ステージを締める曲順は、TNLと同じ。TNLでは、高音部においてPANTAのヴォーカルが今ひとつのできだった『ルイーズ』は、ここでは見事に歌いきられて痛快だ。アンコールの1曲目が『BABY GOOD NIGHT』なのもTNLと同じ選曲だが、2曲目の『メルティング・ポット』は、公式リリースはスタジオ盤も含めて今回が初。その後のPANTAのソロのライヴでもたびたび演奏されて人気の高かった曲が、ここにようやくCD化された。歌詞はかつてPANTAの詩集「ナイフ」に発表されたものとは、細部で何カ所か相違がある。

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さて、直接言及しなかった曲も何曲かあるが、全体を通して言えるのは、フュージョン色が強く線の細さも感じられたTNLに比べ、今回の音源でのHALの演奏は、厚みの増したギターの音作りや、タイトになったコーラス・ワークなどを伴って、よりロック色が強く、段違いにパワフルになっているということだ。TNLではともすれば生硬さが目立ったPANTAのヴォーカルも、より伸びやかで確信に満ちた表情を見せ、その本来の説得力が十二分に発揮されている。また多彩なリズム・アレンジを核に緻密に練り上げられた高度な音楽性を、こうした躍動感あふれるプレイでこなすライヴ・バンドとしてのHALの実力、魅力は、この音源によって改めての評価を受けてしかるべきだろう。

追記:言うまでもないことだが、正規にレコーディングされリリースされたTKO NIGHT LIGHTの歴史的価値は揺るぎのないものだ。紙ジャケ/デジタル・リマスタリング盤が2004年にリリースされており、こちらで入手可能。80年9月18日のライヴ映像を収めたDVDFIGHTING80』(TVKで放映されたもの)もあります。

※収録時間74分43秒
ブックレット概要

PANTA&HALバイオグラフィ〜3ページ/志田歩

●PANTAインタヴュー〜10ページ/高沢正樹 

※インタヴューは1978年10月に行なわれ、当時URC機関誌に掲載されたものの復刻。

●収録ライヴ当日の初出ステージ写真多数掲載

●収録音源メモ〜1ページ/高沢正樹

・・・他、全20ページ

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